研究概要 |
陽子のスピン構造に関する実験的研究は,「スピンクライシス」問題を提起してきた。現在,核子の構造に関する情報が得られてきている。その構造をより深く理解するために,オクテットバリオンの磁気モーメントを解析し,実験的情報の未だ得られていない他のバリオンのスピン構造を明らかにした。核子を含め多くのバリオンはバレンスクオークが70%程度そのスピンを維持しているが,グザイ粒子は50%程度であることが解明された。したがって,グザイ粒子の「スピンクライシス」はより強く,そのことはパートンのスピン分布はバリオンのフレーバーに依存している可能性を示唆している。更に,多面的な解析が必要であろう。一方,核子中の重いクオークの存在との関連で高エネルギーのチャームメソンの発生を構成子模型から研究した。 アノマリーに関連する研究では,カイラル対称性の破れやU(1)問題との関連で,カイラルフェルミオンを含む理論を詳しく調べてきた。格子上のカイラルフェルミオンを含む理論はゲージ対称性を保つ定式化を拒んできた。これを解決するために,マニフェストリーにゲージ不変な格子フェルミオンアクション等から出発するのではなく,格子上のプロパゲーターやゲージカレント演算子から始める方法を研究した。これは,ゲージカレントがいつもゲージ共変に正則化できることに依拠している。また,二次元超重力でのアノマリー構造が,特に,リウビル理論を考察することにより詳しく分析されつつある。
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