研究概要 |
カイラル・フェルミオンがゲージ場と相互作用する系では,カイラル対称性とゲージ対称性を同時に保持したまま理論を正則化することは不可能であると考えられていた.しかし,FrolovとSlavnovによるSO(10)に基づくカイラル理論に対してなされた最近の研究で,これらの対称性を同時に保持する正則化の方法が提案された.彼は,ベクトル型として知られる理論の正則化法として提案された伝統的なPauli-Villars法を無限個のPauli-Villars場を導入することによりカイラル型の理論にも適用できるよう拡張した.本研究は,彼らの方法をモデルに特化しない形式で解析し,その有効性を明らかにした.これまでの研究で明らかにされた点は, (1)FrolovとSlavnovにより拡張されたPauli-Villars法は,SO(10)の模型に限らず,一般のゲージ群にたいして適用できる.ただし,フェルミオンが従う表現がアノマリー・フリーになっており,異種のフェルミオン間でゲージ場が結合するカレントのアノマリーが相殺されていなければならない. (2)フェルミオンが従う表現がアノマリー・フリーでない場合は,この方法は理論を完全に正則化しておらず,ゲージ・カレントに特異な項が現れる. (3)拡張されたPauli-Villars法は,ゲージ不変に理論を正則化するので,藤川の方法と密接な関係がある. 等々である.これまでの研究で,従来のPauli-Villars法と拡張された方法との関係とその有効性が明確になり,より現実的な模型への適用の足掛かりができたといえよう.
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