研究概要 |
FrolovとSlavnovが提唱した一般化されたPauli-Villars法は,カイラル・ゲージ理論とその超対称な拡張に対してカイラル対称性かつゲージ対称性な正則化の可能性を示唆する.われわれは,彼らの方法をモデルに特化しない形式で解析することにより,その有効性を明らかにし,さらに超対称なカイラル・ゲージ理論への拡張を試みた.この研究により得られた成果は, 1.一般化されたPauli-Villars法は,一般のゲージ群に対して適用できる.ただし,フェルミオンが従う表現がアノマリー・フリーになっており,ゲージ場が結合するカレントのアノマリーが相殺されていなければならない.フェルミオンの表現がアノマリー・フリーでない場合は,この方法で理論は完全に正則化さずに,ゲージ・カレントに特異な項が残る. 2.この正則化により真空偏極テンソルは,自動的にゲージ不変である.また,フェルミオン数や共形対称性に現れるアノマリーもゲージ不変となる. 3.一般化されたPauli-villars法は,理論をゲージ不変に正則化するので藤川の共変正則化の方法と密接な関係がある. 4.超対称なカイラル・ゲージ理論に対しても,明白に超対称でゲージ不変な正則化を定式化が可能である.この方法では,ゲージ共変なゲージ・アノマリーが得られる.また,超共形アノマリー等,種々のアノマリーの計算を実行し,従来の方法と比較しても,今回得られた定式化が,簡潔で,種々のアノマリーの見通しよい計算を可能にすることが明らかになった. 今回の研究では達成できなかったが,この研究の今後の発展として,超対称な理論をラグランジアンの段階で明白に超対称に正則化するという拡張Pauli-Villars正則化法の超対称化がある.実際にそのような拡張の可能性は,現段階では完全に明らかになっていないが,ゲージ・カレントに対する共変的正則化の成功は,超対称な拡張Pauli-Villars正則化法の存在を示唆するものであるといえる.
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