年度当初の計画に従い、格子量子色力学に基づくハドロン弱い相互作用行列要素の研究を推進した。現在までに得られた主な結果は以下のとおりである。 (1)CP非保存の研究上重要なK中間子のBパラメータのクェンチ近似での計算を推進した。まず、Kogut-Susskindクォーク作用を用いる場合には、昨年度迄に行った6つの格子間隔に対する計算に基づく連続極限への外挿の信頼性を確認するため、あと一点の計算を行った。結果は、前年度までの結論を支持している。次に、Wilsonクォーク作用の場合は、昨年度に開発したchiral Ward等式に基づく方法による本格計算に入り、4つの格子間隔に対して計算を実行して連続極限への外挿を行った。二つの作用による最終結果はよい一致をしめしており、クェンチ近似によるBパラメータの計算として、現在までの最良の結果を得たものと考える。 (2)Bパラメータと並んで重要なB中間子の崩壊定数の計算と理論的解析を昨年度に続き押し進めた。昨年度の研究により明らかとなった統計誤差の問題の改善のために、拡がりを持つ中間子ソースの方法を組み込んだ本格計算をWilsonクォーク作用に対して実行し、その結果を基に連続極限値を得る上での理論的問題に検討を加えた。さらに、年度半ばからは、有限格子間隔の効果を小さくするよう改善されたクォーク作用(Clover型作用)によるハドロン質量・崩壊定数の計算を開始し、予定の2/3の計算を終えている。この計算終了を待って、二つの作用による比較検討を行い、最終結果をまとめる予定である。 (3)以上の本格計算とならび、弱い相互作用形状因子計算のためのプログラム開発・予備計算を行った。来年度には本格計算に入る予定である。 以上の計算の中間結果は平成8年度格子場理論国際会議で発表し、雑誌論文も逐次発表の予定である。
|