格子量子色力学に基づくハドロン弱い相互作用行列要素の研究を推進した。本年度に得られた主な結果は以下のとおりである。 (1)K中間子のBパラメータのクェンチ近似での計算。この量は、CP非保存の研究上重要なものである。Kogut-Susskindクォーク作用に対しては、前年度迄に行った7つの格子間隔に対する計算結果を基に、連続極限への外挿のための解析を行った。繰り込み定数の2ループ補正の存在を考慮することにより、連続極限値B_K=0.628(42)を得た。Wilsonクォーク作用の場合は、chiral Ward等式に基づく4つの格子間隔に対する結果と、その連続極限への外挿を検討し、B_K=0.62(10)を得た。二つの作用による最終結果はよい一致をしめしており、クェンチ近似によるBパラメータの計算として、現在までの最良の結果を得たものと考える。 (2)B中間子の崩壊定数。これはBパラメータと並んで重要な量である。昨年度に開始した、有限格子間隔の効果を小さくするよう改善されたクォーク作用(Clover型作用)によるハドロン質量・崩壊定数の計算を、3つの格子間隔に対して実行した。その結果と、前年度迄に得たWilson作用に基づく結果を比較検討し、Clover型作用が期待通りの改善された結果を与えることを確認した。B中間子の崩壊定数自身の値としては、Clover型作用による連続極限での最善の評価値として、f_B=163(16)MeVを得た。 (3)以上の本格計算とならび、前年度から準備を進めて来た弱い相互作用形状因子の計算を実行した。結果は、形状因子が中間子質量にかなり依存することを示しており、連続極限での値を求めるには、この点のより詳細な検討が必要であるとの結論に達した。
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