1)研究代表者の菅本は院生上杉智子、理研研究員の山口あづさと共に、標準模型を拡張した、ベクトル型のアップタイプのクォークと一重項のヒッグス粒子を持つ素粒子模型を用いてバリオン生成問題を研究した。ヒッグス・ポテンシャルを工夫するとCPの破れを表す位相を自発的に、電弱相転移で生じたバブルの壁の内部で変化させることが出来る。このバブルの壁によって数百Gev程度のベクトル型のクォークがトップ・クォークに変化する過程を用いてバリオン生成する模型を研究した。この時CPが逆のバブルからの効果を抑えるために、余分の小さなCPの破れをもとの作用に入れる必要が生じた。結果はバリオン数の観測値を再現する。 2)更に研究代表者は非常勤講師の大下範幸、院生の青木真由美と共に、超対称性をソフトに破った、いわゆる「極小超対称性模型」を用いて、電弱相転移によって生じたバブルの壁からの、電荷を持った超対称性粒子であるゲージ-ノやヒッグジ-ノの散乱過程を用いてバリオン生成を行った。この時CPの破れとしては、超対称性模型に特有のゲージ-ノ、ヒグジ-ノの質量行列に導入可能な複素位相を用いた。この位相に対する中性子の電気双極子能率の実験的な制限を加味すると、宇宙のバリオン数の観測値を再現するCPの破れが、中性子の電気双極子能率に対する次世代実験の射程距離にあると言う、非常に興味深い結果が得られた。
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