研究概要 |
三体及び多体共鳴状態の定量的取り扱いができる状況を反映しての本研究の柱は次の二つである。 (1)原子核における3体共鳴現象を広く整理・分析し,そこに見られる共通性と特異性を見出すこと。 (2)3体共鳴状態の典型的な軽い核(A≧6)の同重核を取り上げて,その共鳴状態の示す性質の変化等について解析を行うこと。 この研究実施計画に沿って,本年度(平成9年度)は以下の研究を行った。 1)最も大きな進展を示したものとして,^9Li+nの相互作用の研究が有る。^<10>Li系は結合状態を持たず,共鳴状態が幾つか見出されている系である。実験的にも不確定な要素は大きいが,この共鳴状態の解析は,^<11>Liのハロ-構造等の特異構造や特異的励起状態の解明に不可欠な^9Li+n相互作用の情報が引き出せ。新たな考えを入れて^<10>Liの2体共鳴状態の理論的解析を再構築した。新たな視点とは,芯核^9Liの構造構造状態をを単一配位のものとせずに,多チャンネル結合の^<10>Li=Σ_1{(^9Li)_1+n}状態として解析を進めたことにある。物理的には,N=7の中性子一孔となる原子核(^9lle,^<10>Li)においてはパウリ原理の為にp_<1/2>軌道共鳴状態はエネルギー的に押し上げられ,S_<1/2>軌道共鳴状態では押し上げは生じないことが示された。これによって,この効果を組み入れた3体的に弱く結合する結合状態(論文3)や共鳴状態の解明(論文1,3)について,新たな大きい進展をもたらす課題が生まれたこととなった。 2)単一配位の3体共鳴状態についての解析の研究は,^<10>lle系で一先ず完成した(論文1)。しかし,上記の研究の進展は,多チャンネル結合模型での3体共鳴状態の解析を要求しており,その準備に取り掛かっている。上記の研究で,共鳴エネルギーの検討だけでなく,共鳴幅の定量的検討の重要性が具体的に示された。どの程度多チャンネル結合が生じるかは直接共鳴幅に反映するからである。 3)鏡映核の共鳴状態状態を活用しての理論的研究も大いに発展した。クーロン障壁が加わることによる共鳴エネルギー及び共鳴幅の変化についてである。また,その軌道状態(p軌道,sd軌道等)に対するそれらの変化のである(論文2,4,5)。その際に,物理量の種々の成分についての分析が,複索スケール法で始めて可能となったことが理論解析で活用された。 4)本研究計画を進める上で重要な「多体共鳴状態の理論的解析する複索スケール法とその応用」について,日本物理学会誌から報告が要請されたので「最近の研究から」に投稿した(論文6)。
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