場の量子論の非摂動的現象の理解、特に理論の相構造や力学的対称性の破れの機構の解析は、非常に重要な課題であるが、その解析方法、特に解析的な手法はまだまだ未開発である。そこで金沢大学の青木らとWilson流の非摂動的繰り込み群を用いた解析に着目し、強結合なQEDにおけるカイラル対称性の破れの現象に適用し、それが有効な方法を与える事を見た。平成9年度はより良い近似法の開発を念頭に、3次元スカラー理論における相転移を例に取って考察した。その結果、有効作用のオペレーター展開の仕方を工夫するとかなり粗い近似においても十分良い精度の結果が得られることを見い出し、その根拠について考察した。(論文1編) 一方、近年超対称性のあるゲージ理論の非摂動的解析に飛躍的な進展があった。特にSeibergとWittenによって見い出されたN=2超対称量子色力学の解析では、精確な有効理論の導出もさながら、モノポールが閉じ込め機構という動力学に本質的な役割を担う事を明らかにした事は特筆すべきである。そこでイタリア・ジェノバ大学の小西教授らとこの理論におけるモノポールの性質、特に非整数のクォーク数とCP対称性について考察した。その結果、理論が弱結合の場合は準古典的な方法によって知られているクォーク数と矛盾のない結果を与えている事を示した。更に強結合の場合にも適用されるクォーク数の公式を、理論にクォーク数のカレントと結合する新たなゲージ場を導入することによって見い出し、閉じ込め現象におけるクォーク数の保存則の自発的破れについて考察した。また閉じ込め相の超対称量子色力学の真空のCP対称性やθパラメータ依存性についての考察も行った。(論文2編)
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