研究概要 |
繰り込み群に基づいたパートンシャワーはQED、QCDの模擬実験をする上で欠くことの出来ない方法である。このパートンシャワーの研究をここ10年余りおこなっており、基本研究目的は近似精度を向上させた(NLL近似)パートンシャワーを多くの高エネルギー反応に適用する事である。当面の具体的目標は(1)2光子過程における模型の作成(2)e^+e^-反応の光子生成に対するNLL模型の作成(3)核子核子衝突におけるNLL模型の作成である。 本年度第一の目的であったe^+e^-反応における2光子QCD過程に対するパートンシャワーの作成、特にTRISTAN,LEP実験への適用に向けた細部の検討を行うことができた。この検討、検証に踏まえて、プログラムの使用マニュアルを作成し、ほぼ完成をみた。この過程の特徴は光子にパートン構造が現れる点にある。直観的にいえば、光子がクォークと反クォーク対に分かれ、それらのクォークがグル-オンを放出して、その結果光子が構造をもつことになる。 もう一つの目的はQED反応におけるNLL近似の模型の作成である。具体的にはe^+e^-消滅反応の初期状態に対する輻射補正にパートンシャワーの適用であるが、現在LL近似の模型は完成している。NLL模型の研究はアルゴリズムの細部に対する精密な検討を要求する。なぜなら、NLL近似がQEDの結合定数の2乗と対数の積のオーダであるからである。精密な研究を行った過程で従来作成したLL近似模型の有効性について綿密な議論を行い、この成果を論文としてまとめた。引き続きNLL近似QEDパートンシャワー作成に対する研究を行っている。
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