高エネルギー反応におけるパートンシャワー

1998 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 08640363
• 研究機関: 山梨大学
• 研究代表者: 宗久 知男 山梨大学, 工学部, 助教授 (30174254)
• キーワード: 高エネルギー反応 / QED / QCD / パートンシャワー / NLL 近似 / くりこみ群

研究概要

繰り込み群に基づいたパートンシャワーはQED、QCDの模擬実験をする上で欠くことの出来ない方法である。基本研究目的は近似精度を向上させた(NLL近似)パートンシャワーを多くの高エネルギー反応に適用する事である。今回の研究目標は(1)2光子過程における模型の作成(2)e^+e^-反応の光子生成に対するNLL模型の作成(3)核子核子衝突におけるNLL模型の作成であった。
第1の目的であったe^+e^-反応における2光子QCD過程に対するパートンシャワーの作成は完成し、そのマニアルも既に掲載された。もう一つの目的はe^+e^-消滅反応の輻射補正に対するNLL近似のパートンシャワーの作成である。この研究はアルゴリズムの細部に対する精密な検討を要求する。なぜなら、NLL近似がQEDの結合定数の2乗と対数の積のオーダであるからである。その為に従来のLL近似模型の有効性について綿密な議論を行った。この成果は既に論文として公表している。昨年度の成果は、パートンが光子を放出している間においても結合定数の動的変化をとりいれべきであること、およびNLL近似での強い赤外発散の項を無矛盾に取り扱えたことである。これらは10^<-5>の精度で模型をつくるうえで不可欠な理論的進展であった。これらの成果を踏まえ、今年度NLL近似QEDパートンシャワーの作成を行った。この作成はほぼ完成して現在細かなチュックを行っている。また、この研究に関する論文も完成し、報告書に掲載するつもりである。
第3番目の目標は残念ながら、予定年度のなかで達成出来なかったが、この目標に対する色々な知見は得られ、近い将来の完成を目指したいと考えている。

研究成果

• [文献書誌] T.Munehisa: "A Parton Shower Model for Hadronic Two-Photon Process in ete-Scattering" Z.Phys.C70. 655-660 (1996)
• [文献書誌] T.Munehisa: "Improved QEDPS for Radiative Correction in ete-Annihilation" Prog.Theor.Phys.95. 375-388 (1996)
• [文献書誌] Y.Kurihara: "Hard Photon Distribution in ete-Annihilation Process by QEDP" Prog.Theor.Phys.96. 1223-1235 (1996)
• [文献書誌] K.kato: "GGPS : a Two-Photon Event Generator Based on the Parton Shower Model" Compt.Phys.Comm. 106. 136-156 (1997)
• [文献書誌] J.Fujimoto: "grc4J : a Four-termion Event Generator for ete-collision" Compt.Phys.Commun.100. 128 (1997)
• [文献書誌] J.Fujimoto: "susy23 : an Event Generator for Supersymmetric Processes" Compt.Phys.Commun.111. 185-216 (1998)
• [文献書誌] H.Tanaka: "Comparison of Algorithms for singlet Parton Generations in Deep Inelastic Scattering" Mod.Phys.Lett.A. 13. 1085-1094 (1998)