平成8年度からの継続研究として量子色力学(QCD)のSeiberg-Witten理論を2次元の位相的場の理論として現象論的に理解することを試みた。即ち、QCDのモデュライは繰り込み群の流れ(flow)に依存し、ある種の繰り込み群の方程式を満たすことが予想した。そして、そのような方程式の根底には可積分構造が入っていて、結局はQCDのモデュライは2次元のLandau-Ginzburgポテンシャルで記述される位相的場の理論で記述されることを予想した。この予想を具体的に計算機を使って吟味した。ゲージ群がSU(3)でHiggs場が 1.基本表現と6次元表現の場合: QCDのモデュライはLandau-Ginzburgポテンシャルが3次の多項式で表される位相的場の理論で記述される。 2.8次元表現の場合: この場合も位相的場の理論で記述されるが、Landau-Ginzburgポテンシャルはbranch cutをもつ無理関数で表される。注目すべきは、融合代数(fusion algebra)が1.と同じになって位相的場の理論として1.の場合と同等であると結論される。しかしながら、繰り込み群の流れ(flow)を決める方程式が何であるか分からず今後の重要な研究課題である。 3.10次元表現の場合: 1.あるいは2.と同等。 Higgs場の表現次元が上がっても、このような次元の変化によるモデュライの変化のパターンは同じであることが予想される。それよりも2.の一つの位相的場の理論が二つの異なったLandau-Ginzburgポテンシャルで記述されるという発見は、重要であると思われる。
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