本年度は、中性子星および超新星物質でのK凝縮の非平行相転移、緩和過程および中性子星の冷却と核子超流動との関連を調べた。 前者に関しては熱的に励起されたK中間子を考慮すれば動的相転移を人為的な操作なく追うことができることがわかった。凝縮場と熱的なK中間子による反応確率の比較では、予備的計算により熱的ゆらぎの役割りが重要になることがわかった。熱的ゆらぎの効果は温度-密度平面で考えたK凝縮の相図の考察においても重要な役割を果たす。陽子混在度一定の非対称核物質と電子密度一定の超新星物質では相図は定性的に異なることがわかった。両者に対する臨界曲線の分岐が熱的ゆらぎの効果の目安になるがその温度は10MeV程度の比較的低いものであるがわかり、ここでも熱的ゆらぎの重要性がわかった。凝縮相でのK中間子のゆらぎに対する分散関係については今後より注意深い研究が必要である。 一方、超新星爆発後の熱い中性子星の物質を調べ、誕生時からの進化の過程を研究し中性子星の臨界質量へのより厳しい制限が得られることをみた。中性子星の冷却と核子超流動との関連について次の二点が明らかになった。陽子混在度が大きくなって直接URCA過程による中性子星の冷却が許されるようになると、陽子の^3P_2対による超流動状態が可能になるが、有効質量が現象するために望めないことがわかった。また荷電π中間子凝縮下での準粒子状態の中性子間の対相互作用の扱いを定式化しその特徴を議論した。結果として通常相でのとほぼ同等の臨界温度を得た。 その他実験室での重イオン反応を通して媒質中でのK中間子等のハドロン相互作用をチェックする可能性についても研究した。
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