研究概要 |
1)中間子発生エネルギー領域での有効相互作用:従来の核子以外の自由度をすべて消去する代わりに、孤立した1核子が関与する反応過程を残し、完全に仮想的である過程を消去することにより、中間子発生エネルギー領域での原子核構造・反応を記述する有効相互作用の定式化を行った。その結果、1中間子交換力、静的な2中間子交換力は従来の理論結果と同一であり、さらに核子ーアイソバ-間の力、質量が変化する遷移核力等も導出が可能である。また、電磁相互作用においては、1中間子交換電流は従来の理論と同一であり、さらに、光によるパイ中間子発生も記述可能である。この有効相互作用を用いて原子核におけるパイ中間子光発生反応を研究中である。 2)(3,3)共鳴領域における陽子による光パイ中間子発生反応:原子核における(3,3)共鳴励起の理論的取り扱いは、1)の枠組みで定式化される。まず、核内のオフ・シェル核子による共鳴生成を扱うために、上記で理論枠組みでパイ-核子散乱および光パイ中間子発生反応を分析し、実験とのよい一致を得た。このモデルは、原子核反応に適用する第一歩としての成功である。 3)カイラル・クォーク・ソリトン模型によるバリオンの構造:高運動量移行の反応において、ハドロン間の有効相互作用に含まれる形状因子の詳細な知識は不可欠である。その第一歩として、QCDの特徴を表現するSU(3)カイラル・クォーク・ソリトン模型によりバリオンの磁気モーメントの研究を行った。SU(3)のやぶれとしてストレンジ・クォークとノンストレンジクォークの質量差を取り入れ、8重項については実験値とよい一致を得た。また、10重項に対しては、他の格子理論と同様な結果を得た。これにより、計算されるバリオンの形状因子に対する信頼性が得られた。
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