太陽ニュートリノや大気ニュートリノの観測から、ニュートリノが質量を持ち、混合状態にあることが推測される。太陽ニュートリノ問題は、太陽からの電子(e)型のニュートリノの一部が失われているとの実験で、また、大気ニュートリノの問題は、大気中で生成されたμ型のニュートリノが地上に至るまでに一部失われている問題である。これらの現象は、ニュートリノ混合を考慮すると自然に理解できる。太陽の問題では、e型とμ型の混合、大気中の問題は、μ型とτ型との混合太陽内の物質の効果を考えると、理解できる。問題になるのは、e型とμ型の混合は小さくてよいが、μ型とτ型の混合は大きくなければならないことである。統一理論の観点からは、ニュートリノ混合はクォーク混合とよく似ていると考えられる。クォーク混合はほぼ対角的であるので、なぜニュートリノ混合には大きな混合が現れるのか、大変不思議である。 本研究では、クォーク混合と同時にニュートリノ混合を説明する模型を作ることが主目的の一つである。特に、超対称統一理論での質量と混合の関係を系統的に研究した。統一理論では、アップクォークの質量項はニュートリノのディラック型の質量項と関係している。また、ダウンクォークの質量項は荷電レプトンの質量項と関係している。ニュートリノの質量項の特殊性は、シ-ソ-機構に現れる右巻きニュートリノのマヨラナ質量項(M)で、混合を調べることは直接にこの項を調べることになる。 現在行っている研究は (1)小林・益川行列の実験値を再現するアップとダウンクォークの質量行列を求める。 (2)ダウンと荷電レプトンの質量行列を質量を再現する用に求める。 (3)これらの、行列を用いニュートリノの質量項を求め、実験の情報から右巻きマヨララ質量項(M)の情報を得る。 ことである。(1)、(2)は解決がついたので、現在(3)を研究している。質量項Mは理論が統一されるエネルギースケールでの物理を反映しているので、大変興味深い。
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