研究概要 |
(1)重力波の発生を伴う星の非動径方向の振動のモードはパリティ(偶奇性)により二つに区別される。一方,ブラックホール時空の重力波的な摂動ではその差異がないことが知られている。星が非常にブラックホールのように非常にコンパクトになれるなら,重力波の振動と結び付いたモードがどうように変化するかという問題を明確にし,その結果を論文にまとめた。また,星の回転の様々な振動のモードへの影響の共同研究を引き継き行っている。重力波的な摂動を無視する近似や固有の振動数を数値的に求める定式化等を論じている。 (2)連星の中性子星は重力波を放出し、軌道半径が減少しやがて合体する。その合体過程の最終段階は重力波天文台の有望な観測対象である。合体寸前の最終段階でのモデルとして,軌道運動に対するポストニュートン重力等の相対論的補正項と共に,星の自転と軌道の相互作用,自転同士の相互作用,及び潮汐力などを近似的に考慮した,連星系のモデルを考えた。スピン軌道相互作用,スピン-スピン相互作用,潮汐力等の効果を調べ,その結果を論文にまとめた。 (3)ニュートンリノが長い距離を伝播する際,外部からの重力場がフレーバーの混合にどのように影響するかという問題を検討した。この問題は1996年にAhliwaliaとBurgardが考えたが,その結果や導出方法が奇妙だったので,その後,数人により再検討された。量子力学では拡がりを持った波束を考えるが,相対論では拡がりのある対象を取り扱うのは容易でない。混合には波束のピークの位置が重要になってくる事を考慮し,主要な項のみを調べて,重力場の影響を議論した。
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