原子核のM1およびガモフ・テラー遷移の理論的研究

1997 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 08640390
• 研究種目: 基盤研究(C)
• 研究機関: 日本大学
• 研究代表者: 鈴木 俊夫 日本大学, 文理学部, 助教授 (70139070)
• 研究分担者: 佐川 弘幸 会津大学, 総合数理科学センター, 教授 (50178589)
• キーワード: スピン双極子状態 / ガモフ・テラー状態 / 和則 / 多粒子-多空孔 / 中性孔ハロ- / アナログ状態 / 磁気モーメント / ハイパー核

研究概要

1.原子核のガモフ・テラー状態とスピン双極子状態間のE1遷移の和則とその構造1p-1h、2p-2h配位空間の場合それぞれについて調べた。特に親核でのE1遷移の和則との比較を行った。また、^<48>Sc、^<90>NbにおいてE1遷移強度の分布を簡単なモデルの範囲で調べ、Brinkの仮定と比較しながら論じた。
2.^<12>C、^<16>O等、軽核の荷電交換スピン双極子遷移の強度分布を、配位空間を拡げた殻模型計算によって調べた。テンソル力の効果と配位空間の拡張によって、1状態が分散しエネルギーの高い方向へ押しやられること、2状態は逆にエネルギーの低い方向へ引力を受けることがわかった。また、強度遷移和則と殻模型計算との比較を行った。
3.^<11>Liのガモフ・テラー(GT)状態とアイソバリック・アナログ状態間のM1遷移における和則とハロ-の効果を調べた。M1遷移の和則は親核のM1遷移の和則に比べ増大していること、M1遷移は数個のGT状態に選択的に強く起こることがわかった。
4.中性子ハロ-核^<11>Liのアイソバリック・アナログ状態のクローン・エネルギー差を荷電対称性・荷電独立性を破る力を含めて計算し、^<11>Liの2中性子ハロ-の構造を議論した。ハロ-状態の0p、1s、0d殻の割合がそれぞれ40%、45%、15%であるのが最も可能性が高いことを導き出した。
5.ハイパー核の磁気モーメントにおけるK、π中間子交換流の効果を調べた。^5HeおよびA=6ハイパー核について、Seaqull,mesonicおよびΣ^0励起の寄与を計算し、^5Heの磁気モーメントに-9%の寄与をすることを見出した。また、A=6系の磁気モーメントのアイソベクトル部分にはπ交換によるΣ^0励起機構が主な寄与をすることがわかった。

研究成果

• [文献書誌] T.Suzuki: "Gamow-Teller transitions from ^<11>Li and ^<12>Be" Physical Review. C56. 847-856 (1997)
• [文献書誌] Nguyen Dinh Dang: "Spreading of the Gamow-Teller resonance in ^<90>Nb and ^<208>Bi" Physical Review Letters. 79. 1638-1641 (1997)
• [文献書誌] Nguyen Dinh Dang: "Study of the Gamow-Teller resonance in ^<90>Nb and ^<208>Bi" Nuclear Physics. A621. 719-735 (1997)
• [文献書誌] K.Saito: "Exchange currents for hypernuclear magnetic moments" Nuclear Physics. A625. 95-106 (1997)
• [文献書誌] T.Suzuki: "Electric dipole transitions between Gamow-Teller and spin-dipole states" Physical Review. C57. 139-144 (1998)
• [文献書誌] K.Naito: "Elcctromagnetic energy shift of nucleus between conductin plates" Progress of Theoretical Physics. 97. 749-759 (1997)
• [文献書誌] T.Suzuki: "Spreading of isobaric analog state and isospin mixing" Proceedings of the International Symposium on Non-Nucleonic Degrees of Freedom Detected in Nucleus (World Scientific). 357-360 (1997)
• [文献書誌] Nguyen Van Giai: "Charge-symmetry and charge-independence breaking interactions and Coulomb displacement energies" Proceedings of the International Symposium on Non-Nucleonic Degrees of Freedom Detected in Nucleus (World Scientific). 299-307 (1997)