本年度はSU(3)xSU(2)xU(1) ゲージ理論に基づく、minimal extension of supersymmetric standard model (MSSM)のlagrangian の再構築と、この模型をファインマン振幅の自動計算システムに構築するために必要となる全相互作用を質量の固有状態で書き下す作業を行った。平行して、高エネルギー物理学研究所で開発された自動化システム"GRACE"にこのMSSMの相互作用を組み込むために必要となる基本的アルゴリズム、特に、SUSY理論に特有のフェルミ粒子数の保存を破る相互作用の取扱い、既存のGRACEシステムとの整合性、について研究した。この部分については、共同研究者の一人である立教大学の田中秀和氏が1996年9月にLausanneで開かれた、第5回AIHENPでその成果を発表した。 ついで、SUSY理論を取り込んだファインマン振幅の自動計算システム(SUSY-GRACE)にMSSMのlagrangianを書き込む作業にとりかかった。位相や変数のとり方や記述法の統一規格として、国際的に標準となってきたものを用いることにしたため、既存のGRACEのいくつかのモジュールに多少の変更が生じることとなり、GRACE制作者をふくめた、高エネルギー研究所のメンバーとの共同作業で GRACEシステムとの整合性の再検討とGRACEの変更を行い、それと同時に、SUSY-GRACEの中核となるmodef file と fin file の作成作業を行った。 model file の完成した部分に関しては、特定のSUSY粒子を含む2体反応と3体崩壊反応の大きさをこのSUSY-GRACEを使って計算し、すでに存在している計算値と2倍精度、場合によっては4倍精度の精度で一致することを確認した。このプログラムのチェック作業は、1997年度の前半まで続けられる。
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