研究概要 |
1.「軽い核におけるs-hole戸口状態の2体分解過程において、s-hole状態が有する空間対称性のために、s-hole戸口状態はαクラスターより小さなクラスターには分解できるが、αクラスター以上の大きなクラスターへの2体分解が大きく制御される」という、極めて興味深い選択則が存在することをSU(3)群論を用いて理論的に発見し、この選択則は最近阪大RCNPで実験的に検証された。本研究計画では、殻模型を用いて、軽い核のs-hole状態、特にp殻後半の核のs-hole状態を記述し、この状態からの逃散幅および分散幅、さらにそれぞれの部分分解幅を求めて実験データと比較検討し、軽い核のs-hole状態の分解過程を明らかにすると同時に、中重核領域までの深部空孔状態の分解過程を理論的に調べることを目的としている。 2.今年度は現在実験が行われている^<11>B(s-hole)状態に焦点を置き、1hωの配位空間で重心運動部分を除去する殻模型、「Translationally Invariant Shell Model」、のプログラムを完成させ、得られた殻模型の波動関数をSU(3)の固有関数で展開し、^<11>B(s-hole)状態の波動関数の性質を調べた。 3.この結果、^<12>C(p,2p)^<11>Bの準弾性散乱で強く励起されると考えられるSU(3)[4421](04)とSU(3)[443](04)状態の成分が大きく3つのエネルギー領域(Ex=18,24,29MeV)に集中し、^<12>C(p,2p)^<11>B実験で観測されているs-holeの2〜3個のbump構造に良く対応することを発見した。さらに、低い励起エネルギー領域ではSU(3)[4421](04)成分が主成分で、高いエネルギー領域になると[443](04)成分が主成分となり、この結果は低エネルギー領域ではtriton decayが小さく、高エネルギー領域ではtriton decayが大きくなるという実験結果と良い対応が得られた。興味深い結果として、通常のs殻が詰まった状態では[443](04)の方が[4421](04)よりエネルギー的に低く出現するが、s-hole状態ではp-h相互作用により空間対称性の悪い[4421](04)の方が低く出現するようであり、この理由について現在解析中である。今後は陽子・中性子・重陽子・t・^3He・α粒子などに対するそれぞれの部分分解幅を求め、^<12>C(p,2p)^<11>B準弾性散乱の励起関数についても理論分析を行い、実験データと比較検討を行いたいと考えている。
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