研究概要 |
軽い核の深部空孔状態の代表例である^<11>Bのs-hole状態の構造を明らかにするために、1hωの殻模型で得られる波動関数を用いて^<12>C(p,2p)^<11>B反応の強度関数(具体的には^<12>C→^<11>B(s-hole)+pに対するS^2-factorの分布)の分析を行った。この結果、励起エネルギーで16〜20MeV,20〜26MeVおよび26〜35MeVの3つのエネルギー領域にS^2-factorが集中し、RCNPの実験で発見された^<12>C(p,2p)^<11>B反応の強度関数における3つのbump構造と良い対応が得られた。また、nuclearSU(3)群の固有状態、SU(3)[f](λμ)=[4421](04)と[443](04)状態の分布を調べ、上記のS^2-factorの分布と強い相関があることがわかり、我々がこれまで取り扱ってきた軽い核のs-hole状態に対するSU(3)模型の有効性が確かめられた。さらに、実験データから、[4421](04)状態と[443](04)状態とを比べて、空間対称性の悪い[4421](04)状態が空間対称性の良い[443](04)状態よりエネルギー的に低く出現していることが示唆されていたが、この問題をいくつかのNN相互作用を用いて調べた。この結果、s殻空孔-p殻粒子間の相互作用がNN相互作用の種類によらず斥力的であることがわかり、このためs殻に空孔がある場合、対称性の悪い状態が対称性の良い状態よりエネルギー的に低く出現する機構が明らかにされた。この結果は一般性を有し、s殻が全て占有されているときは対称性の良い状態がエネルギー的に低く出現するが、s殻に空孔がある場合は逆に対称性の悪い状態がエネルギー的に低く出現する、という新しい知見が得られた。
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