研究概要 |
現在本機構で進められているBファクトリー計画で得られる実験結果から小林・益川行列を決めるには、弱い相互作用を記述するオペレーターのハドロン行列要素の理論的計算が必要であるが、格子量子色力学による計算には格子間隔が有限である事からくる大きな系統誤差がある。この誤差は用いる格子フェルミオン作用によるので、物理量に応じ適切な作用を採用し格子間隔依存性を調べ連続極限をとらなければならない。Kメソンのバッグ定数B_KをKSフェルミオン作用を用いて計算し、連続理論での外挿値B_K=0.628(42)を得た。またウィルソンフェルミオン作用を用いた計算も行い、連続理論でのB_Kの値がKSフェルミオン作用によるものと統計誤差の範囲内で一致する事を示した。 bクォークを含む行列要素の計算にはbクォーク質量m_bに依存した有限格子間隔誤差がある。この誤差を系統的に評価しBメソンの崩壊定数f_Bの値を得るため、クローバーフフェルミオン作用を用いた計算を行ない、連続理論での値f_B=173(4)MeV,f_<Bs>5=199(3)MeVを得た。Bメソンの中ではbクォークは非相対論的な振舞をする事を考慮し、格子上でbクォークを直接非相対論的に扱うNRQCDフェルミオン作用による研究も行った。フレーバー数が2および3の場合の有限温度カイラル相転移の研究を、動的クォークの効果を取り入れた数値シミュレーションによりKSフェルミオン作用を採用し行なった。 クォーク質量、ハドロン質量、静的クォーク間ポテンシャルおよびKメソンが2体のπメソンに崩壊する過程でアイソスピンが3/2変化する場合の確率振幅の計算をした。また大統一理論で予言される陽子崩壊の崩壊確率を定量的に評価するため、バリオン数非保存な3クォークオペレーターのハドロン行列要素を計算した。
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