近年、超高速レーザー技術の発展により、エンベロープ形状だけでなく位相特性も制御されたフェムト秒光パルス列を発生することが可能となってきている。位相特性まで制御された超短光パルス列を用いると、電子系の状態をコヒーレントに制御することが可能となり、励起状態の生成や消滅を自由に行なうことができるようになる。このようにして作りだされた物質系の分極が極度に干渉した状態は、従来の分光法では得られなかった電子系の情報をもたらすとともに新しい応用を生み出す可能性がある。本研究では、今後のフェムト秒レーザ技術で重要な位置を占めていくと考えられるフェムト秒光パルス列の新しい発生方法を考案するとともに、様々な計測応用への可能性を探った。 フェムト秒光パルス列を用いると、特定の振動モードを選択的に励起することなどが期待されるが、これまでのところ、その発生に関して現実的に有効な方法は、あまり考えられていなかった。研究では、フェムト秒光パルス列を発生させるための新しい方法を考案し、この方法を確かめるために装置のプロトモデルを完成させ、その有効性を実証した。方法は、マイケルソン干渉計の縦列接続を利用するもので、独自の折り返し配置構造により、コンパクトな光学配置で4段の縦列接続を実現し、精密な時間間隔で16発の光パルス列をプログラマブルに発生することに成功した。この光パルス列発生装置では、干渉計を1段増設するごとに発生するパルス数を2倍に増やすことができるので、必要に応じてさらに多数のパルスを発生することも可能である。 今後、この研究成果を利用することにより、特定の振動モードの選択的な励起や大振幅の格子振動による構造相転移など、電子系やフォノンのコヒーレント制御を通じて様々な物性研究への応用が期待される。
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