本研究の目的は、原子間力顕微鏡(AFM)により強誘電体や強弾性体分域の様子を可視化することにあったが、以下の5つの物質に対する研究を行い、いずれも可視化に成功した。 (1)チタン酸バリウム(BaTiO_3) 室温の正方晶系で、90°分域境界で結晶表面は水平から約0.6゚(=90-2tan^<-1>a/c、a、cは格子定数)だけ曲がっているが、これの測定に成功した。さらに探針に電場を印加して測定を行った時に、このような分域の形が変わることも観察に成功した。 (2)ロッシェル塩(NaKC_4H_4O_6・4H_2O) 約10℃付近で単斜晶分域境界では結晶表面が水平から約0.1°程度、曲がっていることを確認した。これは結晶学的な単斜角の大きさにほぼ等しい。 (3)モリブデン酸ガドリニウム(Gd_2(MoO_4)_3) 室温の斜方晶分域境界は、水平から約0.14°曲がっているが、これをとらえることに成功した。 (4)チタン酸鉛(PbTiO_3) 基本的に(1)の場合と同じであるが、室温で予想される角度は3.5°と(1)よりはるかに大きい。実際にこれを確認した。 (5)燐酸ネオジム(NdP_5O_<14>) 基本的に(2)の場合と同じであるが、この場合にも予想角度は0.5°と(2)よりも大きい。これを確認した。
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