研究概要 |
1.磁性/非磁性金属多層膜の垂直磁気異方性の起源及びそれを大きくする可能性を第一原理的な計算から調べた。計算方法は局所密度近似の枠内で、LMTO-ASA法を用い、スピン軌道相互作用を含めた強磁性状態の電子状態を計算し、スピン分極の方向による全エネルギー差から、磁気違法性エネルギーを求めた。(第一ブリルアンゾーン中の数千〜数十万k点でエネルギーを計算し、線形補間して注意深く計算した。)Pd/Co系では、Coの層数依存性をPd(3ML)/Co(xML)(x=1〜6)で、結晶構造依存性をPd/Co(111)及びPd/Co(100)で、また、界面の歪みの効果についても、調べた。更に、X/Co系(X=Pt,Cu,Ag,Au)、Ag/Fe(100)やAu/Fe(100)系、強磁性金属同士のNi/Co,Ni/Fe多層膜についても、その磁気異方性を計算し、これらの金属多層膜における大きな垂直磁気異方性の起源が、どのような電子構造に由来し、何が重要なファクターであるかについて調べた。これらの計算結果は論文として発表されている。 2.片方のスピンに半導体的なギャップが期待される、ハーフメタルを用いた金属多層膜の可能性を追求するために、ハーフメタルになる化合物の可能性を第一原理的な計算で探索した。Co _2MnZ系の他に、Ru-Mn-Z(Z=Si,Ge)がハーフメタルになる可能性を見いだした。これらの化合物が薄膜でもハーフメタルになれるか、多層膜にするための非磁性金属としてどのような組み合わせが良いか、等を現在検討中である。 3.窒素、炭素、ボロン等を鉄-希土類金属化合物に侵入させると、磁化が強化され、大きな磁気異方性を持つメカニズムを第一原理的に明らかにするために、現在その電子構造を計算中である。
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