研究概要 |
1.強磁性/非磁性金属多層膜の垂直磁気異方性の起源及びそれを大きくする可能性を第一原理的な計算から調べるため、局所密度近似の枠内でLMTO-ASA法により、磁気異方性エネルギーを、X/Co(X=Pd,Pt,Cu,Ag,Au,Ni)系、X/Fe(X=Ag,Au,Ni)系について系統的に計算し、大きな垂直磁気異方性を得るにはどうすれば良いかを調べた(平成8年度)。 2.Sm_2Fe_<17>やNdFe_<12>のような希土類鉄化合物に、窒素、炭素、ボロン等の軽い元素を侵入させると、磁化が増大し、キュリー温度は2倍近く上昇し、一軸磁気異方性が強化され、すぐれた永久磁石材料が実現する可能性がある。我々はこれまで、LMTO法を用いて、磁気モーメントが増大するメカニズムを明らかにしてきたが、今回は、Gd_2Fe_<17>およびGd_2Fe_<17>N_3、およびGdFe_<12>およびGdFe_<12>N等の電子構造をFLAPW法を用いて計算し、その電子密度やスピン分極の空間分布を詳しく解析し、大きな一軸磁気異方性の物理的起源を明らかにした。磁化を強化するにはN、C、BのうちNが最適であることを明らかにした。 3.希土類イオンにおける強い結晶場と4f電子のスピン軌道相互作用に由来する強い磁気異方性の他に、遷移金属の3d電子に由来する部分も無視できない。そこで我々はYCo_5、Y_2Co_7、YCo_3およびY_2Co_<17>について、遷移金属に由来する磁気異方性の第一原理的な計算を行ったが、結晶場に由来するものに比べると比較的小さかった。 4.hcpCo、fccCoおよび強磁性/非磁性金属多層膜Fe(nML)/Au(nML)(n=1,2,3,4)、TM(1ML)/X(2ML)(TM=Mn,Fe,Co,X=Pd,Pt,Ag,Au)について、磁気光学(Kerr)効果の予備的な計算を行った。 5.片方のスピンに半導体的なギャップが期待されるハーフメタルで構成される強磁性/非磁性金属多層膜の可能性を理論的に追求するため、ハーフメタルになる化合物の可能性を第一原理的な計算で探索した。
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