研究概要 |
Al-Pd-Mnの準結晶-準結晶相転移の観測という研究目的を達成するために,今年度は次の研究計画に沿って実行し,次のような結果を得た。 (1)mm角のAl-Pd-Mnの正二十面体相のX線回折的に良質な単準結晶について。準結晶-準結晶の相転移をしない正二十面体相の良質な単準結晶の作成条件をほぼ確定することができた。しかし相転移する正二十面体相については,良質な単準結晶は0.1mm角程度のものしか得られず,作成条件を確定するところまでいかなかった。 (2)4軸回折計等を利用して,両準結晶の構造比較のため反射強度データの収集を行った。またF2相に関しては超格子反射強度の強弱が,いわゆるフェイゾン運動量に比例するか調べる。現在3次元や6次元パタ-ソン関数等を利用してで解析中であるが,両準結晶の構造で何が異なるかについては,わかりつつある。 (3)X線強度を低いノイズで測定するために,X線アナライザーを計数管の前に付け散漫散乱強度分布の様相を測定し,次のような結果を得た。 散漫散乱強度分布は楕円形であるが,中心部に近ずくにつれて楕円形の長軸・短軸の比率が円形に近くなり,外形と中心部の形が相似ではないことを示している。散漫散乱分布は置換型欠損による散漫散乱分布によく似ている。したがってAl-Pd-Mn準結晶正二十面体相中に置換型欠損,つまりペンローズタイリングのタイルの入れ換え(フェイゾン)があるランダムフェイゾンモデルが実験結果を説明することができ,ペンローズスタイリング・ランダムタイリングの両モデルでは説明しがたいことがわかった。
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