近年、低次元電子系における相関効果の研究が精力的に行われている。この理由として、超微細加工技術が急速に進歩したこと、銅酸化物で理想的な1次元電子系が合成されたことなどがあげられる。低次元系では量子揺らぎの効果が大きいので、平均場近似を越えた理論的取り扱いが不可欠である。本研究の目的は、準1次元および2次元とみなせるような物理系の諸物性を、共形場理論、ボゾン化法、非線形シグマ模型、厳密解などの方法を用いて系統的に研究することである。 低次元電子系、中でも近年急速に研究が進展している準1次元系に焦点を当て、量子揺らぎの効果、不純物効果、乱れの効果などに重点をおいて3年間で系統的な研究を行った。研究テーマとして、1次元量子スピン系、混合スピン系、1次元モット絶縁体、梯子型の準1次元電子系、メゾスコピック系などを扱った。研究成果の詳細は研究成果報告書に記されているが、以下に得られた成果を項目別に整理する。 1. 混合スピン鎖の厳密解による解析 2. 1次元および梯子型の電子系でのアンダーソン転移とモット転移 3. 量子細線のコンダクタンスに対するウムクラップ散乱の効果 4. 朝永・Luttinger流体中の動く不純物 5. モット絶縁体における光電子放出スペクトル 6. 非線形シグマ模型を用いたスピン梯子の解析 7. 2次元量子スピン系の量子相転移 8. モット絶縁体の絶縁破壊 9. 可積分系でのドルーデ重み このように、当初の計画に沿った形で系統的な研究が実行できた。ただし、実験結果の定量的な解析に関してはまだ検討の余地がかなりあるので、この定量的な問題を中心に今後とも残された問題に関する研究を継続していく予定である。
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