研究概要 |
液体の過熱限界点(T_S)を測定してnucleation理論と比較することにより、気液相転移のonsetにおける気泡核の形成率・形成エネルギー・大きさについて有用な情報が得られる。この種の研究において、液体ヘリウムは高純度なサンプルが得られ、しかも量子性が顕著であるのでnucleationの研究にとって極めて興味深い研究対象である。本研究は液体^3Heに^4He分子を混入させると、過熱限界点すなわち気泡核のhomo geneous nucleationにどのように影響するかを明らかにする目的で行われた、初めての実験的研究である。実験値は核形成理論による予言値と比較検討した。 実験に用いたサンプルは、^3Heモル濃度が25.00%,50.01%,74.99%,94.57%の4種類である。サンプル液体の容積は7.13×10^<-3>ccである。サンプル液体の加熱には、ガラスキャピラリー法とヒートパルス法を採用し、定圧下で得たサーモグラムよりT_Sを決定した。測定の温度範囲は1.5〜4.1Kであり,サンプルにかかる圧力の範囲は0.05〜1.00atmである。理論値の計算に必要なサンプルの密度にはE.C.Kerr等のデータを、また表面張力にはB.N.Esel'son等のデータを用いた。得られた主な結果は、(1)圧力が小さい領域では、T_Sは圧力に大きく依存するが、圧力が大きい領域ではほぼ直線的に変化する。(2)圧力が約0.1atm付近ではT_Sの実験値と理論値はほぼ一致しているが、圧力が大きくなると実験値が理論値よりもsystematicに大きくなる。(3)このようなsystematicなズレは、純粋な液体^3Heや液体^4Heでは認められず、混合系に特有な現象である。
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