重い電子系物質に形成される異方的半導体エネルギーギャップの研究

1996 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 08640460
• 研究種目: 基盤研究(C)
• 研究機関: 広島大学
• 研究代表者: 浴野 稔一 広島大学, 総合科学部, 助教授 (40185103)
• 研究分担者: 高畠 敏郎 広島大学, 理学部, 教授 (40171540)
• キーワード: トンネル分光 / 近藤半導体 / 磁場効果 / エネルギーギャップ / セリウム化合物

研究概要

(1)CeNiSn・CeRhSbのエネルギーギャップの磁場変化 CeNiSn単結晶のトンネルコンダクタンスの磁場依存性の測定から、ギャップの減少はa軸方向で顕著であり、ギャップの消失する磁場は約15-26Tと推定された。この結果は磁気抵抗の測定結果とほぼ一致する。a軸方向でのこの変化はギャップ構造自体が磁場の影響を受けて潰れていると考えられる。現在、ゼロ磁場でのギャップ構造の関数形を抽出し、磁場の印加によりどのようなパラメーターが変化しているのかを定量的に調べることを試みている。CeRhSbでは磁場の影響は殆ど無い。これはCeRhSbの特性エネルギーがCeNiSnのそれに比べて大きいことと矛盾はしていないが、これについては更に高磁場領域での測定が望まれる。(2)Ce_3Bi_4Pt_3のエネルギーギャップ この物質のエネルギーギャップの値は2Δ_<p-p>=77-102meVが得られた。この値は同じ試料の電気抵抗の温度変化から見積もった活性化エネルギーよりも約20倍以上大きく、これはCeNiSn・CeRhSbと同様である。(3)CeNiSn・CeRhSbとCe_3Bi_4Pt_3との比較 各物質のギャップの値と帯磁率のピーク温度との比をとると13±2となり、それらの物質でのギャップ形成の起源が共通であることが明らかになった。更に興味深いことに、各物質でのギャップ値と近藤温度に対応するエネルギーとの比をとると約3.3±0.5となった。これは弱相関系でのギャップ方程式に固有な値3.5に近い。

研究成果

• [文献書誌] T. EKINO, T. Takabatake, H. Fujii: "Break-Junction measurements of CeNiSn under magnetic fields" Physica B. (印刷中). (3ページ)
• [文献書誌] T. EKINO, H. Fujii, T. Nakama, K. Yagasaki: "Tunneling measurements of the superconducting gap in CeRu_2" CZECHOSLOVAK Journal of Physics. 46. 783-784 (1996)
• [文献書誌] R. A. Goschke, K. Gloos, C. Geibel T. Ekino, F. Steslich: "Vacuum-tunneling Spectroscory on heavy-fermion compounds using a low-temperature tunneling microscpre" CZECHOSLOVAK Journal of Physics. 46. 797-798 (1996)
• [文献書誌] T. EKINO, T. Doukan, H. Fujii: "Tunneling Measurements of the superconducter Nd_<1.85>-Ce_<0.15>Cu O_<4-8>." Journal of Low Temperature physics. 105. 563-568 (1996)
• [文献書誌] T. Ekino, T. Yoshino, T. Takabatake H. Fujii: "Tunneling Spectroscopy of CeRhSb Single crystal" Physica B. 223 & 224. 444-446 (1996)
• [文献書誌] T. J. Sato, H. Kadowaki, H. Yashima, G. Nakano to T. Ekino, H. Fujii: "Newtron scattering study of antiferromagnotic correlation SmceNi_<**>Co_xSn" PhysicaB. 223 & 224. 432-434 (1996)