研究概要 |
平成8年度の研究に引き続き,近藤半導体のBreakJunctionによるトンネル効果の実験的研究を遂行し以下の結果を得た。立方晶構造をとる典型的近藤半導体Ce_3Bi_4Pt_3およびYbB_<12>のエネルギーギャップの値を調べ,これらの物質のT=4.2Kにおけるエネルギーギャップの値の平均値は,Ce_3Bi_4Pt_3で2Δ【thermodynamics】0meV,YbB_<12>で2Δ【reverse curved arrow】30meVであることを世界で初めて明らかにした。両物質ともギャップは帯磁率がピークをとる温度T_x{【tautomer】0K(Ce_3Bi_4Pt_3),【symmetry】5K(YbB_<12>)}以下で急激に発達し,低温でも相転移の秩序変数よりも激しい温度変化をする。低温でのこれらのギャップの大きさは輸送係数の温度変化からの推定値(【surface chemistry arrow】-10meV)に比べて桁違いに大きく,この傾向は斜方晶CeNiSn・CeRhSbと同様である。また,ギャップ形成に関与する相互作用の大きさをあらわす2Δ/K_BT_xの値はCe_3Bi_4Pt_3で約13,YbB_<12>で約36となり,T_xがほぼ等しいにもかかわらず約3倍の開きがあることを明らかにした。これは後者は前者に比べてギャップ形成に関する特性エネルギーが高いことを示す。この違いの原因を更に深く探るため,これらの2Δを各物質の帯磁率のT=0への外挿値X(0)から求めた特性温度T^*=C/X(0)でそれぞれ規格化すると,両者とも2Δ/K_BT^*【reverse surface chemistry arrow】.5-4となり、約3倍の開きは解消された。これは有限温度の非磁性状態で生ずる半導体ギャップとT=0Kの磁気的性質が,普遍的な形で直接関わっており,ギャップ形成機構が共通であることを明快に示す。このT^*は近藤温度T_Kに対応するとされているが,その実験的な裏付けをとることが今後の課題である。
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