研究概要 |
1.拡張ハバ-ト模型に基づくUSの5f磁気状態 NaCl構造を持つ強磁性体USに対し、Uの5f, 6d, 7s軌道-Sの3s,3p軌道を考慮し、電子間相互作用としてU5f軌道相互内の多重極作用、5fスピン軌道作用を考慮した拡張ハバ-ド模型をハートレー・フォック近似で取り扱うことにより、Uの5f軌道のスピン・軌道磁気モーメントを計算した。電子の原子間移行積分等は、常磁性状態での密度汎関数法局所近似(LDAと略す)に基づく第一原理計算により得られたバンド構造を参考に決め、適当な電子間相互作用の大きさを仮定した計算の結果、この系のスピン・軌道磁気モーメントは互いに反平行であり、後者は前者の2倍程度になり得ることを示した。また、得られた結果を用いて、UのM_<4,5>X線吸収磁気円二色性(MCDと略す)の実験が説明できることを示した。一方、LDAに基づく第一原理計算には、軌道磁気モーメントをセルフコンシステントに計算する理論的枠組みは存在せず、それを摂動論的にしか取り扱えないため、それを過小評価する傾向があることが知られている。従って、この結果は、大きい軌道磁気モーメントが存在する系の磁性を議論する上で、何らかの手がかりを与えるものと期待される。 2.多体的配置間相互作用模型に基づくUSの5f磁気状態とX線吸収MCD 強磁性体USで最近測定されたUのM_<4, 5>X線吸収MCDスペクトルを、電子間多重極相互作用を考慮した不純物アンダーソン模型に基づき解析した。この系のMCDは、Uイオンの状態として、5f^2, 5f^3のいずれを仮定しても説明出来ない。また、結晶場を考慮しても、それほどうまく説明できない。この計算では、交換磁場のもとでの5f^2と5f^3の間の強い配置間相互作用を考慮することにより、ある程度MCDの実験が説明出来ることを示した。
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