研究概要 |
1.前年度における予備的な測定に続き,LuFe_2O_4単結晶を用いて,80K-400K,100Hz-1MHzの範囲で低周波誘電分散を詳細に調べた.特に装置を改良して,室温以上の温度範囲では,1kHz以下の領域での測定を行えるようにした.その結果,昨年度に見いだした二つの誘電分散の温度周波数依存性を明らかにし,この結晶での構造解析に基づく,2次元,および3次元電荷秩序とそのゆらぎの理論(山田安定ら)の結論とを比較した. これらの結果を,強誘電体国際会議(ソウル,1997年8月)その他で発表し,さらに論文1篇を印刷中,もう1篇を準備中である. 2.関連物質,特に磁気的フラストレーションと磁性イオンを非磁性イオンで置換したことによるランダムさを共有する系として,YMnFeO_4,LuMgFeO_4,およびそれらと共通の特徴を持つFe_2TiO_5で,磁気モーメントのゆらぎに伴う現象を,磁気測定およびメスバウアー効果によって調べた.その結果,このような系では,部分的にフラストレーションが解消し,その結果,局所的な磁気短距離秩序を持つ区域が存在すること,その挙動が巨視的な磁気的性質に大きく影響することを提案した.これらの結果については日本物理学会で公表し,さらに論文を準備中である. 3.(Er,Lu)Fe_2O_4で予想される,磁気的挙動のクロスオーバーに伴って,誘電的性質にどのような変化が現れるか,を調べる計画を立て,多結晶試料を準備した.
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