研究概要 |
1. LUFe_2O_4単結晶の低周波誘電分散の測定を1Hzまでの低周波域に拡張した.さらに,約350K以下で現れる自発分極の存在を確かめた.これまでに得た実験結果と,電荷秩序とそのゆらぎに基づく誘電分散の理論(山田安定ら)との比較によって,RFe_2O_4系酸化物の特徴的な誘電分散について以下の結論を得た. 1) 室温以下で現れる大きい誘電分散は,山田らの提唱した,3次元電荷秩序相(低温和)内の分域壁の移動で説明できる.分域の移動は,Feの2価-3価イオン間の電子ホッピングで説明できる.低温相の自発分極は電気的測定によっても証明された. 2) 340K付近に現れる誘電率のピークの温度,周波数変化は通常の熱活性化過程で記述できない.この機構は,2次元電荷秩序相内に現れた3次元短距離秩序のクラスターが,相互作用によって凍結することによると考えている.以上の結果をまとめた論文を執筆中で,本年夏までに投稿の予定である. 2. (Er,Lu)Fe_2O_4で予想される,磁気的挙動のクロスオーバーに伴って,誘電的性質にどのような変化が現れるか,を調べるために,多結晶試料を準備した. 3. 昨年度以前に行った,磁気フラストレーション系Fe_2TiO_5の磁性に関する実験結果を検討し,スピングラス的な挙動のモデルを立てた.これとRFe_2O_4系酸化物の磁性とを比較した.この結果について論文1篇を執筆中である.
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