昨年度に引き続いて、「巨視的に明晰に区別可能な二つの状態の線形結合」の関与する現象の探索に向けて、理論研究を行った。この様な研究の基礎となる概念全般を整理する作業に一応の決着を見た(著書)。巨視的量子現象の一つのタイプ(巨視的トンネル現象)として、巨視的核形成に代表される量子崩壊現象がある。ところが、肝心の崩壊率の計算手法に概念が残されたまま、その手法が一人歩きする格好で応用されてきた。いわゆる虚時間経路積分形式に基づく手法である。量子力学の原理に立ち戻って、この手法の性格を吟味し、これを正当化するのに必要な仮定を明確にした(論文)。この仮定が成り立つかどうか、これを点検することは今後の課題である。
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