研究概要 |
平成8年度の研究で,2層三角格子上のXY模型において比熱に2つの発散するピークが存在し、低温側のピークはカイラリティの特異な振る舞いに依る新しい相転移であることを解明した.このことを踏まえて,この新しい相転移の詳細な研究を行い,体温側の相転移はフラストレートしている層とフラストレートしていない層との競合により発現するものであり,比熱の臨海指数をα,カイラリティの急激な変化を表す臨界指数をβとすると,有限サイズスケーリングの解析により,α=0.29(9),β=0.253(3)を得た.このことは低温側の臨界現象が既存のものとは異なる新しい臨界現象であることを示している(Physica A,投稿中).この新しい臨界現象の普遍性を調べるために,3層三角格子上のXY模型において,上面と下面にフラストレーションがあり,中間の層にはフラストレーションがない場合について,モンテカルロ数値実験を行い,2つの転移温度があり,低温側の相転移の性質が2層の場合と同じであることを示した(プレプリント).さらに4層格子上の体系について研究し,その結果は平成10年の春の物理学会に発表予定である. カイラリティがイジングスピンの性質を持つことから,2層格子上のイジング模型の臨界現象を研究した(JPSJ 66(1997)3053,JPSJ 67(1998)to appear).1層格子上のXY模型を研究するための密度行列繰り込み群の方法を開発した(PRE 56(1997)3920).この方法を2層格子上のXY模型に適用した研究は平成10年春の物理学会に発表予定である.多層格子上のXY模型を,面内で分子場近似を行い一次元系として近似し研究した(Physica A,投稿中).
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