研究概要 |
昨年度に引き続き,当該研究を以下のように発展させた. 1.新しい電子状態計算の定式化 密度汎関数理論におけるエネルギー変分原理を利用した「変分Augmented Plane Wave(VAPW)法」の定式化および種々のイオン結晶におけるその有効性についてとりまとめた.このVAPW法は,従来のAPW法に比べ,構成原子の非異種性や結晶異方性の取り扱いに大きな改良を与える. 2.シリコン結晶への応用 共有結合のために異方的効果が大きいダイヤモンド構造をとるSiにVAPW手法を適用し,muffin-tin(MT)近似の範囲内でもセルフ・コンシステント計算による基底エネルギーを下げることができることを示した. 3.超イオン導電体の電子状態 バンド計算の容易さから結晶対称性の高い逆蛍石構造を基盤構造としてもつ超イオン導電体,α-Ag_2Te,および対応した銅テルライド,アルカリ・テルライドに対して,電子状態の計算を広範囲に行った.その結果から,1)従来の予想に反し,価電子帯を構成するAgのd状態とTeのp状態との混合は弱い(dバンドを仮想的にシフトすることにより,状態混合の強弱を評価),2)伝導体帯はAgおよびTeのs状態から構成され,広がった状態にある,3)銀テルライドの半導体的性質を再現するためには,MT球の大きさを変分的に決める(エネルギーを最小化する)ことが重要,などを明らかにした.
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