電極界面では、電解質イオンおよび溶媒分子は強く配向していると考えられるのでモンテカルロシミュレーションによって解析した。電極に電圧がかかっていないときとかかっているときで電解質イオン分布が非常に大きく変化する事が見いだされた。すなわち、電圧がかかっていないとき、正イオンと負イオンは同数だけ電極に吸着し、その外側に正負イオンほぼ同数が2層程度緩く配列する。これに対して、電圧がかかっているときには、帯電した電極の対イオンが非常に強く吸着し(今の場合、正イオン)、それよりイオンの半径分だけ電極から離れた位置に負イオンが多く局在した。そしてその外側に半径分ほど離れて正イオンが多くあつまった。このような正イオンと負イオンの交互に配置する構造は初めて見いだされたもので、今後そのメカニズムの解明は興味の持たれるところである。この電解質溶液に反応体を1分子いれて、全体でモンテカルロシミュレーションをおこなった。それを基に一般化反応座標にたいして、反応体の電子移動前の状態と電子移動後の状態の自由エネルギー曲線をもとめた。その結果、反応体が中性の時の自由エネルギー曲線の曲率は荷電したときの自由エネルギー曲線の曲率の約1/20となることがわかった。電解質溶液の揺らぎが線形的であれば、この比が1になるはずであるので、電極反応では非常に大きな非線形効果が現れていることがしめされた。その機構を解析した結果、反応体の電極面にたいする運動(揺らぎ)が反応体の荷電状態で大きく異なっており、それが自由エネルギー曲線の形に大きく影響を与えていることが明らかになった。
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