格子の空間構造のために生じる強い量子揺動に起因する新しい物性に関して、量子スピン系や強結合電子系(ハバ-ド模型)での新しい秩序の在り方やその運動形態について研究を進めた。 反強磁性ハイゼンベルク模型における空間構造の効果に関して、スピン1と1/2が混在する系において、スピン一重項の配位の取り方によって、いろいろ異なった非磁性相が現われ、それらの間に基底状態と励起状態の間のギャップが消失する相転移が存在することを見出した。量子モンテカルロ法や転送行列法で低温での熱力学的性質も調べた。 また、量子スピン系に不純物による磁気秩序への効果としてスピン1の一次元鎖にわずかにスピン1/2をドープした系の磁気誘起を量子モンテカルロ法を用いて、その形状や温度変化を研究し、誘起モーメントによる現象の不純物濃度や結合定数依存性、さらにはその温度依存性などを明らかにした。特にこれまで十分希薄と考えられて来た3%程度の不純物でも低温では相当大きな磁気秩序が現れることが見つかり、けっして全くの非磁性物質として解析してはならないことがわかった。そのため低温での準励起の性質などにも新しい特徴が見つかる可能性が出て来た。 量子効果と格子希釈効果の相乗作用として現われる量子グリフィス相の特徴を明らかにするため、横磁場イジング模型を希釈正方格子上で調べ、局所帯磁率の発散などを発見した。 古典的な基底状態には存在しない量子揺動によるエントロピー効果による新しい相の出現やその相図について詳しく調べた。特に、対角化による研究では調べられる系の大きさが限られているため相転移の場所を明解に決めることが出来なかったが、波動関数の性質を調べることで小さな系でも相の移り変わりが明解に現われることを示した。また、対応する古典系で有限温度でエントロピーのために類似な相転移が起こることを見出した。 ハバ-ド模型における強磁性出現機構や磁気秩序の形態について研究し新しいタイプの強磁性出現機構を発見するとともにそこでの秩序の性質を明らかにした。 更に、これらの量子状態のダイナミックスの特徴についても研究を開始するに至った。
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