本研究は、構造形成の素過程(特に成長界面での分子鎖の動的構造)および融液構造が巨大分子の構造形成に及ぼす影響を、分子鎖のフォールディング(折れ畳)に注目して徹底的に検討することを目的として始めた。 まず、巨大分子の秩序化過程を分子動力学(MD)シミュレーションを用いて究明した。巨大分子の秩序形成は現実には極めて緩慢な過程である。実際の分子構造に忠実なモデルを用いたMD計算から巨大分子に現実的な結晶化をミュレートすることは不可能であると思われる。ここでは、大胆に粗視化したモデル(バネ・ビーズモデル)を用いた。また初年度は、界面に強く吸着した分子鎖の二次元空間での秩序化を調べた。かなり長時間(10ns程度)の計算を行う事により、分子鎖の折れ畳結晶化を再現する事が出来た。 更に、詳細な秩序化過程を、結晶化温度および分子鎖長の関数として調べ、 (1)秩序化が明瞭な3段階(初期過程、中期過程、後期過程)に分かれること (2)結晶化に際して融点近傍では顕著な構造的揺らぎが観測されること (3)形成されたラメラ厚(フォールドの周期)が実験的観測と同様に著しい過冷却度依存性を示すこと などが明らかにされた。
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