合成高分子、タンパク質、DNAなどの巨大分子は、従来の物性物理学の概念では促え切れない多くの興味深い問題を有し、研究者の強い関心を集めている。とりわけ巨大分子の構造形成の問題は、高分子材料の構造制御、タンパク質の高次構造発現機構、究極的には生命の構築原理の解明、などを目指して精力的な研究がなされている。本研究では、巨大分子の構造形成の微視的機構を、結晶界面構造や融液構造などと関連させて総合的に研究する事を目的として始めた。特に今年度は、鎖状分子の融液表面膜の形成と、高分子鎖の成長界面での折り畳み結晶化を中心に研究した。 鎖状分子は単分子膜や多分子膜などの特徴的な凖二次元構造を形成する。最近、n-アルカンの融液表面において特異な表面秩序構造の存在が見出され、大きな関心を読んでいる。我々は、コンピュータシミュレーションを用いて融液表面の秩序構造発生を研究し、融点直上において表面秩序膜が自発的に形成されることを確認した。現在、分子構造を系統的に変化させて、表面秩序構造発生の分子的機構を探っている。 結晶成長界面での高分子鎖の秩序化過程、特に高分子フォルディングの微視的過程の解明は、数十年来の難問であり今日まで膨大な研究がなされてきた。我々は界面での素過程を、単純化した2次元モデルを用いて研究し、比較的短時間で規則正しい折れたたみ結晶化が観測される事を明らかにした。現在はより一般的な3次元での研究を行い、現実的な系での素過程の解明を急いでいる。
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