合成高分子、タンパク質、DNAなどの巨大分子は、従来の物性物理学の概念では捉え切れない多くの興味深い問題を融資、研究者の強い関心を集めている。とりわけ、巨大分子の構造形成の問題は、高分子材料の構造制御、タンパク質の高次構造発現機構、究極的には生命の構築原理の解明、などを目指して精力的な研究がなされている。本研究は、巨大分子の構造形成の微視的機構を、結晶界面構造や融液構造と関連されて総合的に研究する事を目的としている。 高分子結晶の表面構造の分子動力学的研究ら、結晶表面がかなり乱れた構造を有すること、結晶表面では分子鎖はおおきな運動性を示すこと、この乱れた表面構造が融点直下で観測される高温相の結晶構造に良く対応すること、などを見出した。このような結晶界面での高分子鎖の秩序化過程では、結晶79表面での分子鎖の運動性が重要な意味を持つ。我々は、分子動力学法を用いて高分子鎖の折れ畳結晶化の素過程を調べ、比較的短時間で規則正しい折れ畳み結晶化が観測される事を明らかにした。 長鎖状高分子は特徴的なラメラ状の秩序構造を形成する。また、比較的短鎖長分子は単分子膜や多分子膜などの特徴的な擬二次元構造を形成する。最近、n-アルカンの融液表面において特異な秩序構造(単分子膜構造)の存在が見出され大きな関心を呼んでいる。このような融液表面での単分子膜の存在は、構造形成の立場からも極めて興味深い現象である。我々は、コンピュータシミュレーションを用いてアルカン融液の表面構造を研究し、融点直上の数度の温度範囲において、特異な表面秩序膜が自発的に形成されることを確認した。
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