酢酸イソアミルを溶媒としたポリメタクリル酸メチル(PMMA)の希薄溶液の相分離速度は非常に遅く、相分離温度以下でも光散乱実験により、分子量M、平均二乗回転半径<s^2>、第二ビリアル係数A_2が決定できる。これを利用して、PMMA鎖のコイル-グロビュウル転移の特性を解明した。試料として分子量(M_X10^<-6>)が2.35、4.4、12.0の分別したPMMAを用いた。光散乱測定はθ-温度61℃から0℃の範囲で行った。得られた膨張因子α^2(=<s^2>/<s^2>_0)は還元温度τ(=1-θ/T)を用いて解析した。実験より以下の事が明らかになった。尚、酢酸イソアミルの代わりに、tert-ブタノール+水(2.5vol%)の混合溶媒を用いた場合にも、定性的にはほぼ同様の結論が得られた。 1、分子量が2.35_X10^6と4.4_X10^6のPMMA鎖は、相分離温度以下に急冷後30分程度で完全に収縮した。分子量が12.0_X10^6のPMMA鎖は、急冷直後の30分間に急速に収縮し、その後は徐々に収縮を続けた。 2、膨張因子α^2はτM^<1/2>のみの関数で、Mには依存しない。τM^<1/2><-300でα^2は0.18の一定値をとった。 3、α^<-3>_<VS>τM^<1/2>のプロットは三つの領域、即ち、コイル領域、グロビュウル領域、α^2一定の領域で明確に異なる挙動をした。このプロットによりコイル-グロビュウルのクロスオーバー点が判明した。 4、コイル領域とグロビュウル領域でのα^2_<VS>τM^<1/2>の関係は現在のコイル-グロビュウル転移の理論で説明できるが、-τM^<1/2>が大きいところでのα^2一定の挙動は現在の理論では説明できない。 5、A_2_<VS>τM^<1/2>のプロットではコイル-グロビュウル転移に特徴的な極小が現れた。
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