蜜蜂は、ある種の磁性物質を持ち、地磁気を利用していると考えられている。本研究では、蜜蜂と同じく女王蜂、働き蜂、雄蜂がそれぞれ役割分担して集団生活をしているマルハナ蜂を研究対象として取り上げ、このマルハナ蜂の各個体の磁性の有無、成長段階での磁性の違い、生物磁性の形成過程などを解明し、蜜蜂との類似点・相違点を明らかにする事を目的に研究を進めた。 研究対象としたマルハナ蜂は、玉川大学農学部・小野正人博士より提供していただいた。働き蜂、雄蜂、女王蜂のそれぞれについて、巣穴から出てすぐの若い成虫と巣穴から出て時間が経過した成熟した成虫を明確に区別したものを数匹ずつ良く洗浄し、頭部、胸部、腹部に切り分けて測定試料とした。 これらの試料の帯磁率の温度依存性および磁化の磁場依存性などをSQUID磁束計を用いて測定し、マルハナ蜂の磁性に関して次のような結果を得た。 (1)マルハナ蜂においても働き蜂の腹部に明らかに磁性物質がある。 (2)しかし、蜜蜂の働き蜂とマルハナ蜂の働き蜂の腹部の磁性を比較すると、マルハナ蜂の磁性は小さく、後者は前者の約1/3である。 (3)蜜蜂と比較して、マルハナ蜂の成熟した成虫の働き蜂、雄蜂、女王蜂の腹部の磁性の間には蜜蜂ほどの顕著な差がない。 (4)これらのことはマルハナ蜂と蜜蜂のコロニーとしての相違点を反映していると思われる。
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