研究概要 |
フェルミオンである電子の,粒子交換に対する波動関数の反対称性に由来する電子ビームの強度干渉効果を,電界放出源からの電子の高速同時計数によって実験的に検証するのが本研究の目的である. 検出器として低エネルギーの電子でも高速で応答するシリコン・アバランシェ・ディテクターを使用し,このパルスを高速で増幅して遅延同時計数を行う.干渉の起きる時間幅を決める電子のコヒーレンス時間に比べて検出系の分解時間が4桁程度大きいため,高速かつ極めて精度の高い同時計数システムが必要で,これで十分な積算をして干渉の起きない場合との比較をする.通常の時間・波高変換器+マルチチャンネルアナライザーのシステムでは,時間のビン幅の非一様性が無視できない.このため,同時刻のイベントとそれと少しずれたイベントとを,高い精度で一様なビン幅で計数するコインシデンスのシステムを設計した. このための高速ディジタル回路およびアナログ回路を,本研究費で購入したプリント回路製作機で試作し,性能を調べた.すなわち,時間的に無相関と考えられる熱電子ビームに対するコインシデンスシステムの応答を調べた.その結果,10のマイナス4乗程度の時間のビン幅の非一様性が残ることがわかった.さまざまの原因のうち最も重要なのは,遅延時間を切り換える回路の特性の違いによることが分かった.このため,回路に使用する論理素子をより高速のものに交換するとともに,回路パターンも作りなおしているところである. 一方,同時刻のマ-キングのためのパルスレーザについては現在製作中である.ステップリカバリダイオードによる高速パルス回路を,コインシデンスシステムと同じくプリント回路製作機で作り,必要な数十ピコ秒のパルスが得られた.これにレーザーダイオードを組み込んでまもなく完成させ,時間差ゼロのマークおよび時間分解能の測定を実施する.
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