1)我々の開発した単一イオン単一光子時間相関法(SISP)を更に改良し、分解能85ps(世界最速)のdecay測定や時間分解スペクトルの測定を可能にした。応用例としては、検出部をTOFに組み込んだ新しい分析法の開発がある(東大・合志研)。SISPを用いて以下の成果を得た。 2)弗化バリウム単結晶の初期イオン照射効果に極めて大きな高密度励起効果のあることを、内殻励起と緩和励起子のdecay測定により明らかにした。 3)イオン照射下のアルミナで、光や電子線照射の場合に知られるものとは全く異なる発光帯を発見した。この発光帯の普遍性を調べるため、他の金属酸化物やアルカリ金属及びアルカリ土類金属ハライド結晶にわたって広範囲に測定を行った。結果、寿命が100ps以下、幅約2eVの発光帯が新たに見出された。これた、イオンによる高密度励起という条件と、高時間分解能(85ps)の装置が有って初めてなし得る発見である。更に、励起密度依存性、温度依存性等を調べた結果、新発光帯は、イオン照射によって瞬間的に生成する電子-空孔対間の結合によって生じたプラズマ状態の発光と考えられる。イオントラック内の初期集団状態の初めて直接観測でる。これらの手法と結果は、イオン照射研究のブレークスルーとなるばかりでなく、、wide band-gap物質の高密度励起の研究への貢献が期待できる。基礎吸収帯までのエネルギーが高く、レーザーや放射光では高密度励起が不可能な物質でも、イオンを用いてその壁を易々と打ち破り、ダイナミクスの研究ができるのである。
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