研究概要 |
本年度は,粘性の実測に用いる適当な大きさのアルミナの小球の入手に手間取ったため,当初の予定を一 更して,次年度に行う予定だった金属中の原子拡散の測定を中心に研究を行った.過去の研究による常圧に る金属の粘性率と自己拡散速度・トレーサー拡散速度との関係をコンパイルして検討した結果,測定に特殊 分析機器を必要とする同位体を用いる自己拡散速度を求めなくても,同程度のサイズを持った異原子を拡散種 たトレーサー拡散速度の測定によって,自己拡散速度がほぼ近似的に得られることがわかった.測定対象と 溶融金属は,常圧でのデータが豊富なAu,Ag,Fe-C合金の3つを選び,その中におけるニッケルの拡散速度 力依存性について測定を行った。ニッケルは金属鉄とほぼ同じ原子サイズをもつため,これをトレーサーと 用いて測定した拡散速度は,オーダー的には十分に鉄の拡散速度評価に利用できる。また、電子線プローブ クロアナライザによって精度よく拡散プロファイルが得られるというメリットもある。 金属溶融体の粘性率・拡散率は,理論的には剛体球モデルで取り扱われることが多い。この剛体球モデル シリケイトメルトの粘性率・拡散率の評価にも適用されている。この剛体球モデルの圧力依存性の部分,す ち圧力増加によるメルトの充填構造の変化が拡散速度や粘性率に及ぼす影響,の取り扱いをより精密化する 圧力変化の効果がより顕著に現れるシリケイトメルト中での水の拡散実験を行い,拡散速度を2GPaと3GPa いて決定した。この結果は1996年日本火山学会秋季大会で発表するとともに,1997年春Franceで開催される の大会で発表予定である。
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