作年度に引き続き、AuやAg等の溶融金属中における元素拡散の圧力依存性を測定した。例えばAu中のNiの拡散の場合、1200度、1GPaの温度圧力下での拡散速度は、2.1+-0.2x10^<-9>m^2と決定された。この値は、常圧下の実験および溶融金属の構造理論から予想される値と誤差の範囲で一致している。研究期間中には実験は3GPaまでの範囲でしか行えなかったが、今回の実験方法で8GPaまでの圧力下での実験が可能であり、圧力依存性を明確にするため今後引き続き実験を行う予定である。一方、予定していた高圧化での粘性率の測定は失敗に終わった。粘性率の圧力依存性が小さく、実験圧力下での溶融金属の粘性が当初の予想よりもの低すぎたため、浮沈法に使用する球を非常に小さくせざるを得なくなった。このため、溶融金属との間の表面エネルギーの差が影響したのか、実験温度を融点以上に上昇させても球の浮上が円滑に開始せず、現象の再現性がまったく得られなかった。Au中のNiの拡散速度がAuの自己拡散速度と等しいと仮定して Sutherland-Einstein の関係式から粘性率を求めると、5.4+-0.5x10^<-3>Pasという値が得られた。これは常圧での値とほとんど変わっていない。 一方、溶融体の構造と粘性率・拡散率との関係を明らかにするために行ったシリケイトメルト中におけるH_2Oの拡散実験においては、フレームを構成するSi基と結合しているOH基の拡散速度が圧力上昇とともに顕著に増加したのに対して、メルトの空隙中を移動するH_2O分子の移動速度は、圧力上昇とともに顕著に低下することが見いだされた。
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