本研究ではプリニアン噴火のプロセスを噴出軽石中に保存されている発泡構造から明らかにすることを目指した.十和田火山の中セリ(5千400年前)、南部(8千500年前)という典型的なプリニアン噴火を取り上げて2つの噴火の類似点、相違点を発泡構造、噴火プロセスの観点から研究した.野外調査、及びえられた試料の解析から1)噴火シークエンスに応じた見かけ密度、サイズ分布の測定、2)バブルのサイズ分布の噴火シークエンスに応じた変化の決定が本研究で新たに得られた結果である.以下の点が明らかになった. 類似点:噴火の主要部分は比較的短時間の均質な噴火であり、後期に火山灰を噴出するステージがあり、軽石の密度は増加した.噴火の開始直後は密度は高く、主要部分へ至るにつれて減少していく. 相違点:全堆積物サイズ分布では中セリは細粒成分がおおく、南部では粗粒成分が多い.また軽石の表面構造は両者は異なり、南部の軽石はより平面的である.電顕による軽石の発泡構造においては南部はバブルサイズが大きく、均質であるのに対し、中セリではサイズ分布が小さな所から大きなところまで均等に含んで居り発泡プロセスが異なっていることを示している. 両者の違いは温度、化学組成の違いによる粘性の差を反映している可能性がある.発泡からfragmentationまでの期間の長短がこのような差を生み出したと解釈した.すなわち発泡の開始からfragmentationまでの期間が短いと核形成、成長が同時に進行するために幅広いサイズ分布をもつバルブが形成されるのに対しfragmentationまでの期間が長いと成長が卓越し、均質な大きさサイズのバブルが形成される.発泡の開始は揮発性成分の量によって決まるがfragmentationを決める過程が何であるのか明らかではなく将来の興味深い課題である.
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