1) 遠地実体波波形計算プログラム Takenaka & Kennet(1996)による2.5次元平面波問題の新しい効率的な定式化を用いて、彼らと共同で遠地実体波波形を計算するプログラムを開発した。従来の方法に比べて計算時間を大幅に(数十分の1)短縮でき、本研究だけではなく様々な分野への応用が期待できる。 2) 近地地震波波形計算プログラム 境界条件(流体・弾性体境界)を満足する格子点配置やその精度に関する問題を一つ一つ検証し、それらを解決したプログラムを開発して、実際の観測波形をよく再現して実用性を実証した。 3) 近地地震波モーメントテンソルインバージョン 相反定理に基づく波形計算方法を導入した。この方法は、多数の震源に対する応答を一度に計算できる、震源の発震機構も任意に与えることができる、などの特徴があるため今後の地震解析では標準的なアプローチになると考えられる。本研究では、このアプローチの実用性を実証するために、日本海溝で発生した浅い地震の試験的なモーメントテンソルインバージョンを行ない、ほぼ妥当な解を得ることができた。 4) 遠地実体波解析プログラム 発震機構・震源位置解析プログラムと地震モーメント分布推定をするプログラムを作成した。後者では、未知数である断層面上のモーメント分布が負にならないような非線形の逆問題を新たに定式化した。応用例として、津波波形からは非常に浅い場所に断層運動が集中していたと推定されている1992年ニカラグア津波地震を解析したところ、地震波で調べると深い場所にもかなりの断層運動があったことが示唆された。 5) 並列計算機環境の構築 マルチプロセッサ計算機を導入して、UNIX OSの標準的なプロセス間通信機構を用いた並列化を近地地震波計算のプログラムに施した。CPUが2個の場合にCPUが1個の場合よりも1.5倍ほど高速化できた。まだ充分な高速化(並列化)には至っておらず、今後の課題である。
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