日本列島における重力異常分布の特徴をより定量的に把握するために、それを水平方向に微分し、重力異常水平勾配分布図を作成した。それによって勾配が急でかつそれが帯状に分布する地域が各地に存在することが明らかになった。この重力異常が水平勾配に急勾配である帯状の分布を、重力異常急変帯と呼ぶことにした。 重力異常急変帯の勾配の大小とその連続する長さとによって、様々な規模の重力異常急変帯を定義することができる。ここでは、日本列島全体を見渡して、勾配が10mgal/kmかつそれが30km以上連続するものを、第一級の重力異常急変帯と定義した。このような第一級の重力異常急変帯は日高山脈周辺、北上山地西縁、関東平野中央部、関東平野西縁部、糸魚川静岡構造線、中央構造線西部などに認められる。これらの多くは既知の地質構造と対応させて成因を理解することが可能であるが、関東平野中央部のように既知の地質構造と対応させることができない多数の急変帯が存存する。それらの多くは平野地域、火山地域に位置し地表面を堆積物で覆われているため地質学的実態が把握できないものである。本研究では、既知の地質学的知見と、地震活動、地震学的地殻構造も考慮して、重力異常急変帯の地質学的実態を解明する試みを行った。その結果、第一級の重力異常急変帯は地質基盤構造に起因し、その多くは地表面に現れていないものと考えることができることが明らかになった。これらのいくつかは地震発生に関係する潜在活断層である可能性が高いので地震活動、地殻変動を含めたより詳しい解析が必要である。
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