本研究は、消費電力の少ない野外観測用の高感度磁力計を開発し、活火山の火口近傍に於ける地磁気変化を観測して地下の熱の推移と火山活動の関連を考察しようとするものである。このため、本年度は、特に高感度磁力計の開発に努めた。開発された磁力計は、フラックスゲート磁力計と称するもので、特に新しいものではない。しかし、火山活動の推移を把握することを目的とするために、長期間の安定性に優れる必要がある。そこで、地球主磁場を打ち消す必要のない偏角(東西)成分のみとした。開発機器の温度安定度は極めて良好とは言えないので、地中2m深に埋設して気温の変動を避け、センサー部には温度計を組み込んで、観測機器近傍の地熱変化に関わる見かけの地磁気変化を除去する方式とした。また、埋設センサー部の傾斜変動は地磁気分力に大きなドリフトを引き起こす。機器の大地への固定には厚さ20cm、縦横60cm四方のコンクリート板を用いたが、火山活動に伴って地盤が傾斜する可能性が大きく、この有無を確認できるようにセンサー部に水準器とモニターTVを組み込み、傾斜角度1分の変動を検出する工夫を行った。消費電力および記録容量の節減をはかるため、傾斜の監視は記録交換の時点にのみ行う方式である。開発装置の特性は、感度100nT/Volt、分解能1pT(ピコテスラ-)、温度安定性1nT/℃、計測間隔1分、記録容量30000データ、消費電力12V、20mAである。 機器の完成が冬季になり、阿蘇火山の表土が凍結したため、現場に於けるデータ取得は平成9年3月にずれ込んだが、阿蘇中岳火口の225°および315°の方向に設置して観測を開始した。従来から観測されている地磁気全磁力の観測からは得られないし新しい情報がえられるものと期待している。運用状態を見た上で、45°、135°方向にも展開する。
|